タイのバンコク病院(Bangkok Hospital)にあるバンコク不妊治療センターで責任者を務めるソンブン・クナティコム先生のもとには、その実力から国内外から数多くの患者さんが訪れます。これまでの経緯と、バンコク不妊治療センターで行われている不妊治療について、お話を伺います。

これまでの経緯

1966年、日本文部省の奨学金制度で大阪大学医学部に入学しました。日本で医師免許を取得たのち、大阪大学医学部附属病院の産婦人科で研修を行いました。
1974年にタイへ帰国してから、タイ国立マヒドン大学の附属病院で3年間の研修を行い、婦人科の専門医を取得しました。1986年には再び大阪大学へ、長らく興味を抱いていた内分泌・不妊症の分野を学びました。
2000年からはバンコク病院バンコク不妊治療センターで責任者を務め、おもに不妊症の治療と出産に携わっています。また、これまでにタイの産婦人科学会の会長などの委員会活動も積極的に行なっており、現在はマヒドン大学医学部で教授を兼任しています。

バンコク不妊治療センターでの診療について

週に300人の患者さんを診療し、体外受精は週に5〜6件実施している

現在、バンコク病院バンコク不妊治療センターでは、おもに不妊治療と出産に携わっています。
外来では、私を含む3人の医師で、週におよそ300人の患者さんをみています。
一般的な治療の流れとしては、まず不妊の状態を診断し、患者さんの希望と適応に応じて人工授精(体内受精)を試み、ケースによっては体外受精に移行します。当科では、平均して週に5〜6件の体外受精を実施しています。

人工授精(体内受精)
受精の場である卵管膨大部に受精に必要十分な精子を届けるため子宮腔内に精子を注入する治療法です。
体外受精
採卵手術により排卵前に体内から取り出した卵子と精子の受精を体外で行う治療法です。

患者さんの半分は外国の方

当センターを訪れる患者さんの約半分はタイ人で、残りの半分は外国の方です。日本、ミャンマー、中東、中国の患者さんが多くみられます。
日本人の患者さんの多くは、タイに駐在している方々です。一方、他の国々からはメディカルツーリズム(居住国とは異なる国や地域を訪ねて医療サービスを受けること)で訪れる患者さんが多いです。

不妊治療を受ける患者さんには、さまざまなケースがある

患者さんには、さまざまなケースがあります。たとえば日本人の場合、タイ駐在中に不妊治療を始める方、日本の病院から紹介状を持参し不妊治療を継続する方、他病院で受けている不妊治療の効果が思わしくない方などがみられます。

不妊治療について

患者さんの国籍や人種で治療内容が大きく変わることはない

不妊治療は、国際的な治療法を基準に進めていきます。そのため、患者さんの国籍や人種で治療内容が大きく変わることはありません。また、医師の使命として誰にでも同等に治療するべきとも考えます。

不妊治療では、本人と家族の意思・希望がもっとも重要

不妊とは、「妊娠を望む健康な男女が避妊をせずに性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しない状態」をさします。生命維持のために治療すべきとされる一般的な病気とは異なり、不妊治療においては、患者さん本人や、ご家族の意思・希望がもっとも重要になります。
不妊治療では、本人やご家族の希望があった場合、医師は科学的・理論的に妊娠のチャンスや治療に伴うリスクを説明します。

一般的には、検査ののち薬物治療、人工授精、体外受精を行う

不妊治療では、患者さんの状態を把握するためにまず検査を行います。治療は、薬物療法、人工授精(体内受精)、体外受精の順で行います。
不妊治療は、39歳までに行うのが理想的です。なお、40歳を過ぎていても生理があれば妊娠のチャンスはあります。

体外受精について

近年は体外受精の研究が進み、受精卵の培養の精度が向上しています。
体外受精とは、採卵手術により排卵前に体内から取り出した卵子と精子の受精を体外で行う治療法です。卵子と精子が受精し、細胞分裂を始めた受精卵を「胚」と呼びます。当センターでは、経験豊富な胚培養士が体外受精などの生殖補助医療をサポートしています。

胚培養士
医師の指導下で体外授精などの生殖補助医療を行う医療技術者です。

卵子凍結について

タイでは、卵子凍結を行うことが可能です。
卵子凍結とは、未受精の卵子を凍らせて長期間保存しておき、将来的に活用する方法です。一般的に卵子凍結は、晩婚の出産を想定する女性や、がんの治療を予定している女性が、将来の出産に活用します。凍結した卵子の保存期間は、通常5年を目安とします。
なお、タイでは、凍結保存した卵子は配偶者にのみ使うことが可能です。その背景には、卵子凍結をビジネスに利用することを禁じる目的があります。

ソンブン・クナティコム先生からのメッセージ

私は現在、基本的に不妊治療を担当していますが、そのほかにも、当センターで不妊治療を受けて妊娠された方、あるいは私を指名して来院された患者さんについては、出産にも携わります。
不妊治療から出産まで、日本語で行えることは安心につながるでしょう。ありがたいことに、私を指名して当センターに来てくれる日本人の患者さんは多いです。私はこれからも、子どもを望む夫婦を可能な限りサポートしていきます。
タイで不妊治療を受けたい方、安心して出産をしたい方はもちろんのこと、妊娠・出産のことで少しでも不安がある方は、相談だけでも歓迎します。ぜひ、当センターにお越しください。